RIVER

いい歳こいたゲイのどーでもいいお話です。

悲しみの果て

 

とことんまで自分を追い詰めるときがある。

 

 

精神的に考えに考えに考え抜いて、思考回路をただただ構築して行く。その作業に第三者の思考は一切関係なく、淡々と心の中に難攻不落の城が築かれる。誰にも気づかれることはない。城が組み上がっていくことも、城の存在自体も。

 

しかし。

 

人の思考なんてものはなんにもないところから発生するはずもなく、回路が構築される過程において多かれ少なかれ第三者の影響は否めない。純度で言えば多少劣るわけで。誰でもそう。自分だけじゃない。でも誰も心の中に城なんて築いてない。

それどころか、城を築きたい人はたいてい外に大々的に築いてる。他人を使って、社会を築いて、世界を作って、笑ってる。

 

城を作って笑うなんてことは自分の中ではありえないことだったりする。

 

 

子供の頃、夢を語ると笑われた。

 

「そんなものじゃ食っていけない」

 

酒を飲んで現実から逃げている人がそう言って寝ている子供を起こして殴った。夢を語ることはいけないと教えられたその子供は、その先夢を語ることは2度となかった。そして自分の一部分も心の奥底に隠した。

それでも彼は不安だった。心を誰かに覗かれるんじゃないか、と。彼には心に城を築く必要があった。誰にも立ち入れない世界。小さくていい。誰も入れなければいいのだ。光の射さない、暗がりの湿った世界を閉じ込める城が彼には必要だった。

 

 

人の心に土足で入り込もうとする人間はそこそこいる。ほとんどが興味本位。入口がたいして面白くもないものだとそういう人間はすぐに去っていく。しかしたまに色んなものを剥いで心を裸にしようとする人間がいる。中を見せろ、お前の本性を見せろ、と。バールでこじ開け、ハンマーで殴り、時には火をつけ、ボロボロになった城にそいつはこう言った。

 

「お前はそうやって生きてきたんだな」

 

ある種の悪意。心を見せないことへの恐怖を抱くそいつは、焼けただれた傷口に容赦なく爪を立て、追い詰めていく。もはやそいつの目的は城の中を見ることではなく、城を破壊することにある。

気持ち悪い。なんで?なにもしてないのに。見ないでよ。こっちも見てないじゃん。人にして欲しくないことするなよ。触るな。

 

なんの責任がとれるの?

 

城の奥にしまったものは、

夢だけじゃないんだけど、

それを見て、

 

責任とれるの?

 

 

 

いちばん怖いのは、生きてる人間。